No.163 「二元代表制」と「地方政治」について。

「二元代表制」と「地方政治」について。

 地方自治体は、いわゆる「二元代表制」を採用しているといわれています。これは、行政権を担う「市長(首長)」と、議決権を担う「議会」の構成員(議員)を、「直接」有権者が選挙で選ぶ制度です。  
 一方、国政では、有権者は選挙で議員を選び、議員が行政府の長(内閣総理大臣)を選ぶ、「議員内閣制」を採用しています。このように、国政と地方では、政治の仕組みが異なっています。ですから当然、国政と地方政治では、「議会」の役割や「議会」に期待されるべきことも違っています。今回は、「二元代表制」における「市長(首長)」と「議会」の政治手法について、私の考えを少し書いてみたいと思います。

市長(首長)の政治手法について。

 「市長」の持っている権限は、行政を「執行」する権限と、予算を調整する権限です。この二つの「権限」を「市長」一人が有しているということは、「市長」には大変大きな権限があるということです。それで、「大和市」という「限定的」な地域に限っていえば、「市長」は総理大臣よりも大きな権限があるという人もいます。
 「市長」の政治手法は、どちらかといえば「トップダウン」方式です。「市長」は大きな権限を持っていますから、自らの政策を実現するために、全庁挙げて政策を立案し、予算を調整して、その実現を目指すことができます。「市長」のリーダーシップが上手く機能すれば、さまざまな施策は早いスピードで実現していくことになり、それが市民のニーズと一致していれば、いわゆる「良い政治」を行っているということになるでしょう。
 一方、「トップダウン」や「リーダーシップ」というのは、「独裁政治」に陥りやすい面も併せ持っています。「市長」と考えの違う人にとっては、「良い政治」で無くなってしまうこともありますし、市長が「政策」を誤ってしまうと、自治体にも、市民にも、大きな被害を与えてしまうこともあります。そのようにならないため、法は「議会」を「市長」と「対等の機関」として置いて、バランスをとるように配慮しているのです。これが「二元代表制」の意味するところです。

議会の政治手法について。

 「議会」の持っている権限は、「議決権」です。条例も予算も、「議会」が「議決」して初めて成立します。また、「市長」の予算執行についても、毎年「議会」で「認定」するかどうかを判断します。仮に「議会」が決算を「認定」しなくても、予算執行自体が無効になるわけではありませんが、「政治的」に、「市長」には大きな責任が発生します。「議会」の政治手法は、「市長」の「トップダウン」に比べて「ボトムアップ」といえます。議員は、それぞれの地域で、また、地域外でも、直接市民の方々からさまざまなご意見をいただきます。市議会議員は一番有権者に近いところにいる政治家ですから、「直接」市民の皆様の「声」を聴ける「場所」にいます。このことは大変重要です。それぞれの議員は、市民の皆様からの「声」を市政に反映させるべく、「市長」に対してさまざまな政策提案を行います。前号の「大和主義! !」にも書きましたが、大和市議会では、現在それは「一般質問」という形で行われていることが多いです。「一般質問」を「市長」が受け止めて「執行機関」として実行されれば、ある意味「二元代表制」が機能したといえます。しかし、「市長」も政治家ですから、政治家としての「市長」の意見と、議員の提案が相容れないということもあります。「一般質問」は、議員の「質問」と、「市長」の「答弁」という形をとる以上、「執行機関」たる「市長」が「やらない」と言ってしまえば、そこまでです。もちろん、議員としても、時間を置いたり、切り口を変えて質問したりして、「市長」の政策転換を求めることはできます。それでも、どうしても「市長」と意見が異なっている場合はどうすれば良いでしょうか。
 私は、ここからが「真」の「二元代表制」の本領発揮であると考えています。「市長」に問うても「やらない」ならば、「議会」に問うてみるということです。「議会」で本当の政策論議を行い、「市長」が執行せざるを得ないような内容の「条例」を作るとか、「議会」として「市長」に執行を求める、そのために必要な予算を組むように求める内容の「決議」をするとか、そして、当該施策の実施が盛り込まれていない予算案は、修正ないしは否決するとか、実は「議会」としてできることは、実に沢山あるのです。
 また、「決算」審査は、「議会」が持つ最大の「チェック機能」を発揮する機会です。予算が正しく執行されたかは、最終的に「議会」が判断します。決算の「認定」を否決するかどうかはともかくとしても、厳しい審査を「議会」が行うことは重要です。私は、議席をお預かりして以来、そういう態度で審査に臨んできました。
 「市長」と「議会」が、政策的な論点で健全に「対立」し、それぞれが、市民にとって何が最善かといった議論を闘わせられるような環境を作ることが、今、地方政治・地方議会に求められていることだと考えています。

「議会改革」の必要性について。

 私は、そのような「議会」になっていくことが「議会改革」だと思っています。私は、議席をお預かりする前も今も、「議会改革」を最重要な政策課題として捉えてきました。そして、初当選以来、「議会改革」を論ずる場所にずっと関わってきました。議会基本条例を制定する際には、議会基本条例検討協議会の副会長として議論をリードしてきました。また、議会改革実行委員会が組織された際には、副委員長、委員長の職責を担い、一定の改革が実現できました。「議会」が合議制であること、議員によって考え方や、議会改革への思いにいわゆる「温度差」があることなど、「議会」の特性上、急激な「改革」が難しいということはありますが、これからも、一歩一歩着実に「議会改革」を進めてまいります。
 今年度、大和市議会は、議会基本条例の検証を行っています。私は、最初の議会基本条例検証委員長を拝命しました。前回の委員会では、「議会」が持つ議決事項の追加について議論し、次回の定例会に議員提案として条例を出す事が決まりました。これもまた、一歩前進です。市民のさまざまなニーズが市政に相応しく反映されるためには、市民の意見を吸い上げる、「ボトムアップ機能」を持った「議会」がいかに正しく機能するかが大きな「カギ」であると思っています。中村一夫は、これからも「市民のための議会改革」に邁進してまいります。