新型コロナウイルスウイルス感染症の拡大防止のため中止としていた行政視察を今年度から再開しました。同時に、他市からの行政視察の受入れも今年度から再開しています。行政視察は、先進地の施策を調査し、行政に提案していくもので、議員活動として大変重要な意味を持っています。私が所属している厚生常任委員会は、高齢者福祉、障害者福祉、児童福祉、子育て施策等を所管する委員会で、本年、10月12日から14日まで、三日間の日程で3市の施策を調査してまいりました。以下に報告いたします。
1.山形県東根市 「子育て支援施策」について
東根市では、総合保健福祉施設「さくらんぼタントクルセンター」と子どもの遊び場「ひがしねあそびあランド」を視察しました。「さくらんぼタントクルセンター」の代表的な施設である「けやきホール」は、東根市のシンボルである「大けやき」をイメージした屋内複合遊具で、大きな滑り台を始め、子どもたちの冒険心を刺激する大変魅力的な施設です。近くにある屋外の遊び場「あそびあランド」の遊具もそうですが、多くの子どもたちで賑わっています。両施設とも無料で、市外の人も利用できます。大和市にも子どもたちに人気の大きな遊具を備えた施設はありますが、大和市の施設との大きな違いの一つは、子どもたちの遊びに「禁止」を設けていないということでした。子どもたちの遊びには多少「危険」なこともあります。いわゆる「冒険」的な要素を伴う「遊び」になれば、とかくそういった傾向があります。大和市は、「安全」のためにと「冒険的」な要素を極力取り除くようにしています。東根市は「ごみと多少のけがはお持ち帰り下さい」というコンセプトで臨んでいるということでした。どっちらが正しいということではないと思いますが、「子どもの遊び場」を整備するに際しての行政の「考え方」を再考させられる内容でした。また、大和市は遊具の「対象年齢」にも厳しいですが、子どもの成長には個人差がありますから、画一的に「年齢」で利用の有無を判断して良いかどうかも疑問です。基本的には、親(保護者)が正しく判断して子どもを安全に遊ばせる、そのサポートをするのが行政の役割であると思います。私にも三歳の幼児がいるので、自分の子どもを遊ばせているときのことを想像しながら、東根市の事業を見せていただきました。行政が行うのはあくまでも「子育て支援」であり、「子育て」の責任は主に親にある。行政は支援はできても責任を負うことはできない。これが「子育て支援事業」の原則であり、これを逸脱してはいけないということだと思います。
2.山形県上山市 「ICTを活用した健康ポイン事業」について
大和市も「健康ポイント事業」を行っています。大和市の「健康ポイント事業」は、ポイントカードにスタンプを集めて、応募して抽選で景品が当るといった事業ですが、上山市の「健康ポイント事業」は似て非なる事業です。「健康ポイント事業」参加者に「活動量計」を貸与して、参加者は「活動量計」を携帯して、日々の活動を行います。市内各所に設置してある「読み取り専用端末」に自身の「活動量計」をかざすとデーターが行政と共有されます。データーは民間事業者で分析され、健康づくりのアドバイスがなされます。貯まったポイントは地域で使える商品券と交換できます。商品券は、地域で使えるものなので、地域経済の活性化にもつながります。このように、上山市の「健康ポイント事業」は、単にポイントを集める事業ではなく、「健康づくり」をサポートする事業です。また、大和市のように当る人と当らない人もでない、皆が貯まったポイントを利用できるという点でも優れていると思いました。ただ、ICTを活用する事業のため、導入時の初期費用がかかることと、情報を分析したりするための委託費用もかかります。それでも、事業の目的が健康な人を増やして、医療費を削減しようということですから、費用がかかったとしても意味のある事業であると思いました。少なくとも、大和市の「健康ポイント事業」よりはかなり進んだ事業であり参考になりました。
3.栃木県宇都宮市「産後うつ検査・産後ケア・産後サポート事業」について
少子化とその対策が叫ばれる中、多くの自治体が妊産婦に対するする施策を実施しています。大和市も産後ケアとして、訪問型のサービスを始めますが、宇都宮市は、訪問型のほかに通所型、宿泊型の産後ケア事業を実施しています。特に宿泊型は人気が高く、多くの方に利用されているということです。宿泊型は(市が助成しているとはいうものの)、費用もかかり、病院の協力も必要なことから、すぐに大和市で実施することは難しいかもしれませんが、さまざまな可能性を考えてみることができると思いました。また、「産後うつ」検査は、早期に対策が必要な方に必要なケアを行えるといったメリットがあります。大和市は、この分野でまだまだ遅れていると思いました。必要な施策の実施を行政に求めていきます。
〇行政視察から政策実現へ
これまでも行政視察をふまえて、政策提案や具体的な条例の制定につなげてきました。たとえば、平成24年に、私が大和で初めての「議員提出議案」の経済政策条例「大和市商業振興条例」を作ったときも、藤沢市、静岡市等を視察して、両市の類似の条例を参考にさせていただきました。また、大和市では議員提出の政策条例を作った事例がなかったため、その手法を鎌倉市、大津市などから学ばせていただきました。大和市が「議会基本条例」を制定した際も、最初に議会基本条例を作った北海道栗山町を視察して参考にしました。条例以外にも、シリウス図書館に関して、佐賀県武雄市図書館、長野県塩尻市図書館を視察して、図書館を中心とした「まちづくり」や、従来の「図書館」の規定概念を超えた新しい時代の「図書館」の在り方を提案しました。シリウスの芸術文化ホールも、当初は旧中央文化会館ホールの600名規模を行政は計画していましたが、市民の要望を受け、座席数を増やすことを検討していました。新潟県柏崎市のホールを視察し、二階席を作ることを提案し、結果として現在の1,000席を確保するホールとすることができました。このように行政視察は、さまざまな議員提案を通して政策に反映されています。もちろん、提案したすべてが即政策に反映されるとは限りませんが、引き続き根気強く取り組んでまいります。