No.284 令和4年度一般会計決算が不認定となりました

8月30日(水)から始まっていた9月定例会が9月26日(火)に閉会しました。最終日には議案の採決が行われ 、今定例会に上程されていた令和4年度一般会計決算は「不認定」となりました。地方自治法の規定により、地方公共団体の決算は、議会による認定を受けなければなりません。おそらく、大和市において一般会計決算が認定されなかったのは、史上初のことと思いますので、経緯を少しご説明します。

〇激動の令和4年

今回の決算の基となっている令和4年度一般会計予算は、令和4年3月定例会で、賛成多数をもって承認されました。しかし、同時に当該予算には「全員賛成」で「附帯決議」が可決されています。当初予算に対して、「附帯決議案」が付されたことも、おそらく大和市の歴史上初めてのことだと思います。

ことの発端は、前市長の「パワハラ疑惑」に関することです。前市長に対しては、前副市長が市役所内でのたび重なるパワハラ行為を告発しましたが、前市長は一貫してパワハラ行為は無かったと主張し、前副市長の主張を「ねつ造」であるとして裁判を起こしました(この裁判は前市長の事実上の敗訴が確定しています)。そして、この裁判における自らの代理人を市の顧問弁護士に委任したのです。前市長は、あくまでも「個人的」な裁判であるから、市の顧問弁護士に「個人的」に委任することは問題ないと主張しました。しかしながら、一人しかいない市の弁護士が、一方の代理人として全面的に前市長の立場を代理することは、場合によっては市と市長の「利益相反」に当ることも懸念されることから、議会としては疑念を示したわけです。特定の人物が関わる「デリケート」な内容であることに配慮して、決議文としては「市の顧問弁護士の選任は、市長個人の訴訟との関係で、市民等から疑念を持たれることがないように」という幾分「抽象的」な表現を取らざるをえませんでしたが、いわんとしていたことは誰からも明らかで、前市長が本件を市の顧問弁護士に委任していることに対して厳しい警鐘を鳴らしたものでありました。それでも、前市長は引き続き自身の代理人を市の顧問弁護士に委任し続け、行政当局も「問題ない」との態度を取り続けました。前市長は、このような議会軽視の立場を取り続けた結果、令和4年12月定例会では、大和市の歴史上初の現職市長への「問責決議」が可決され、続いて「辞職勧告決議」も可決されました。その後行われた市長選挙には、当初出馬しないと言っていた前市長は前言を撤回して出馬しましたが、結果として落選し、実に16年に及んだ「大木市政」が終了しました。このように、まさに令和4年は激動の年となりました。

〇決算「不認定」の意味するところ

今回、決算が「不認定」となったことで、実際何がどうなるのでしょうか。決算が「不認定」となったからといって、令和4年度に行われた予算執行が無効になるわけではありませんし、行政側に具体的な「補償」のようなものが発生するわけでもありません。ひどく冷めた言い方をすれば、決算を「不認定」にしたからといって、すでにもう「終わってしまった」ことのなのです。では、決算の「不認定」はまったく意味がないのかというと決してそういうことはありません。何よりも「政治的」には大きな意味を持っています。行政側は、次回以降の予算編成、予算の執行、議会への説明などには一層慎重にならざるをえないでしょう。前市長は期数を重ねるにつれて「独裁的」な傾向が強くなり、それは行政職員にも遺伝して、議会への説明が不十分になっていました。その最たる例が、前市長政権末期に行われた「やまと公園」の改修工事です。改修工事を巡って議会の賛否が大きく割れた原因の一つは、議会に対する説明不足でありました。今回の決算「不認定」を受けて、行政と議会との良い緊張感は高まると思います。

今回の決算は、新市長によって提出されたものですが、内容は100%前市長によって編成され執行されたものです。したがって、当該決算の否決は、前市長による予算執行に対する否決であり、新市長の予算執行に対する評価ではありませんので、そこははっきりさせておく必要があります。当初予算に「附帯決議」を付けるということは、大変「重い」ことです。そう度々あることではありません。だからこそ、議会は自らの「重い」判断に「筋」を通さなければならないと思っています。先述した行政と議会との良い緊張関係は、議会が自らの「重い」判断に「筋」を通したときに初めて意味を持つものだと思います。令和4年度一般会計予算に対する「附帯決議」は「全員賛成」で可決しましたから、今回の「不認定」も全員一致で行われることが望ましいと思いましたが、結果はそうなりませんでした。決算を認定した議員にも、それぞれのお考えがあると思いますので、個別に批判することはしませんが、全員賛成で決算を「不認定」と出来なかったことは残念です。とはいうものの、今回決算を「不認定」としたことで、「かろうじて」議会としての「矜持」を示すことができました。幾分「後味の悪い」ものでしたが、何とか議会としての「矜持」を保てたと思っています。そして、それによって、今後の行政執行に対して、「独裁・暴走」を許さないという議会としての意思を示せたと思っています。

市議会のホームページから当日の議会での審議の模様が動画配信されますので、是非、ご覧下さい。