現在、我が国が抱える最も深刻な問題の一つは間違いなく「少子化」です。「少子化」は将来にわたって我が国の人口を減少させることになりますから、社会機能を維持していくこと「そのもの」に大きな影響を与えます。まさに「国難」と呼ぶべき問題です。国も「少子化対策」にはこれまで多くの政策を試みてきましたが、なかなか「上手くいってこなかった」というのが現実です。このような社会状況を踏まえて、国は新たな「こども政策」を実施します。それが、昨年4月にできた「こども家庭庁」、そして同じく4月に施行された「こども基本法」です。「こども家庭庁」創設、「こども基本法」施行から1年が経過しました。今回は、「こども政策」の新たな展開について考えてみたいと思います。
〇「こども政策」の基本理念
令和3年12月21日に閣議決定された「こども政策の新たな推進体制に関する基本方針(以下、「基本方針」という。)」には6つの基本理念が掲げられています。
(1)こどもの視点、子育て当事者の視点に立った政策立案(2)すべてのこどもの健やかな成長とウェルビーイングの向上(3)誰一人取り残さず、抜け落ちることのない支援(4)制度や組織による縦割りの壁、年齢の壁を克服した切れ目のない包括的な支援(5)プッシュ型支援(物質的支援)、アウトリーチ型支援(訪問支援)への転換(6)データ•統計を活用したエビデンスに基づく政策立案、PDCAサイクル(評価、改善)です。これらの理念のもと、こども家庭庁は、総理直属の機関として各省大臣に対する勧告権等を有する大臣のもと、こども政策に関する企画・立案・総合調整機能を一元的に所管することになりました。また、こども政策に関して多省に属しない事務を担い、各省庁の間で抜け落ちることがないよう必要な取組みを行うとともに、新規の政策課題にも取り組むことになっています。
〇「こども基本法」の施行と地方自治体の役割
昨年4月1日、「こども家庭庁」の創設と同時に施行されたのが「こども基本法(以下、「法」という)。」です。この法は議員立法により成立したものですが、第一条で「この法律は、日本国憲法及び児童の権利に関する条約の精神にのっとり、次代の社会を担う全てのこどもが、生涯にわたる人格形成の基礎を築き、自立した個人としてひとしく健やかに成長することができ、心身の状況、置かれている環境にかかわらず、その権利の擁護が図られ、将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現を目指して、社会全体としてこども施策に取り組むことができるよう、こども施策に関し、基本理念を定め、国の責務等を明らかにし、及びこども施策の基本となる事項を定めるとともに、こども政策推進会議を設置すること等により、こども施策を総合的に推進することを目的とする」として立法の目的を明示しています。国は「法」に基づいて「こども大綱」を策定することになっており(法10条)、昨年12月22日に閣議決定されています(こども家庭庁のホームページでご覧になれます。)。そして、都道府県は、国の「大綱」を勘案して「都道府県こども計画」策定し、市町村は国の「大綱」と都道府県の「こども計画」を勘案して「市町村こども計画」を策定することが努力義務化されました。神奈川県は、国の「大綱」をふまえて本年3月より「こども計画」の審議を始めています。大和市が「こども計画」を策定するのは、県の計画が策定されてからになります。法では市町村の「計画」策定は「努力義務」となっていますが、是非、大和市も「こども計画」を策定するように促してまいります。加えて、法11条によって地方自治体には、こども施策の策定・実施・評価をするにあたっては、こどもや若者、子育て当事者等の意見を聴き、政策に反映させるために「必要な措置」を講じることが「義務づけ」られました。「計画」を策定するのも、「必要な措置」を設けるのも「行政」ですが、議会としても注視してまいります。いずれにしても、「こども政策」の具体的な実施を中心的に担っているのは地方自治体です。「こどもまんなか」社会を実現するために、引き続き行政と協力しながら政策を進めていきます。
〇「こども思いやり条例(仮称)」について
先日「駅頭活動」していたときに、ある女性の方から「ベビーカーを邪魔にしない条例を作って欲しい」といわれました。なるほど、「子育て支援」というと「無償化」とか「施設」とか予算を伴う事業ばかりを考えがちです。もちろん、そういった施策は大切ですが、「子育て」に「親切」な社会を作っていこうという働きかけも大切だと改めて気づかされました。「ベビーカー」に限らず、子育てされている方々への「思いやり」といった目に見えない「支援」を啓発できるような条例についても検討したいと思います。是非、子育て当事者の皆様のご意見をお聞かせ下さい。
〇「こども常任委員会」について
大和市議会には、4つの常任委員会があって、それぞれの「所管」をもっています。こどもに関わるものとしては、教育委員会に関することは「文教市民経済常任委員会」が、こども部に関するものは「厚生常任委員会」が所管しています。私は、こどもに関する事業を所管する委員会が分かれているというのは好ましくないと思っています。それで、現在の常任委員会を再編して、教育委員会とこども部を所管する「こども常任委員会」を創設したいと考えています。今年度、大和市議会は「議会改革」の委員会を設置して、議会改革に関する協議を行います。是非、「こども常任委員会」の創設を協議して、実現させたいと思っています。